iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048) (アスキー新書 48)
大谷 和利
アップルの創業者であり、現CEOのスティーブ・ジョブズとアップルのビジネスについて書かれた本。
ジョブズの極端な人格、プレゼンテーションのうまさ(この本ではロックコンサートに例えられている。今年の初めにMacBook Airが発表されたMacWorldに参加してはじめて彼の生プレゼンを見る機会あったがたしかにうまい。人を惹きつけるオーラがある)、製品開発に注ぐ彼の熱い思いなどが十分に伝わってくる一冊。
アップルは技術はもちろんのこと、製品企画、マーケティングの巧さでも有名だ。
アップルのプロダクトを使うことによって生まれる楽しさ、気持ちよさ、そういったプロダクトとプロダクトを使う人との相互作用から生まれるユーザーエクスペリエンス全体を最高のものにするべく、絶妙なトータルソリューションを提供している。
本書は組織論、プレゼンの仕方、製品開発のいわゆるHow To本ではないが自分の仕事に参考になるヒントがいくつかあった。
中でもキャッチコピー。
本書には「キャッチコピーから見るアップル社」という項目があり、そのひとつとしてiPod Shuffleの"Life is Random"というキャッチコピーが紹介されている。
iPod ShuffleはiPod製品ラインアップの中では最も価格が安いmp3 player。
そして、その特徴を一言で表現したものが、"Life is Random."というキャッチフレーズだった。人生がランダムならば音楽も順番どおりに聴く必要は無い。本来であれば、欠点としてとらえかねないコストダウンのための仕様が、最大のセールスポイントになりえたところに、アップル社らしい商品戦略の切り口を垣間見ることができる。
アップルは液晶ディスプレイや超小型ハードディスクを採用せずにShuffleの大幅コストダウンを狙った。
"Life is Random"というキャッチコピーはその欠点を逆手にとってShuffleを使うことで得られる喜びやそれを使うことの必然性を表現している。
アップルが製品開発においてどのタイミングでこういったキャッチコピーを作っているのかはわからないが、キャッチコピーはプロダクトができた段階で「どのようにしてユーザに訴えかけていくのか?」ということを表現するためのものだけではなく、製品開発の初期の段階から考えていく必要があると思う。
要は製品コンセプトを表現するものとしてのキャッチコピー。
そんなことはどこでも言われていることだし、当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、根っこの部分がしっかりしていないと後々困ることになるはずだ。
製品開発中には実際に色々な難しい状況に遭遇するし、迷うこともある。
その時にこういったキャッチコピーがあれば製品開発における重要な拠りどころとして機能すると思う。
(製品コンセプトの重要性というものを言葉以上のものとして体で覚えていかなければならないな、と感じている今日この頃。あと重要なのはこれをちゃんとチームの間で共有する、ということ)
この記事にも似たようなことが書いてある。
最初にそのキャラができることをはっきりさせておくことで、ゲームが引き締まってくるのだと言う。そのために桜井氏が薦めるのが、キャラの個性をキャッチフレーズのような言葉にすること。たとえば、『ファイヤーエムブレム』からの参戦となるアイクは“Mighty Howling Blade(うなる剛剣くらいの意味)”などとすることで、キャラの個性をしっかりと把握するのだという。
製品開発におけるキャッチコピー。
たぶん業種や世の中の流行などに関係なく、普遍的なものだと思う。
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